あのとき、違う選択をしていれば…

あのとき、違う選択をしていれば…

※クリックするとスライドが始まります

EQ感情知能で解説

「あの時、違う選択をしていれば」。この言葉、夜中に頭の中で流れたこと、ありませんか?

同僚の昇進を知った瞬間、「おめでとう」と言いたいのに、胸のあたりがキュッと締まる。

帰り道、脳の中で「もしも大会」が始まる。
「もっと早く復帰していたら」「資格を取っていれば」「転職してたら」。

夜中の2時、隣で眠る子どもの寝息だけが聞こえる静かな部屋で、
「もしも」が止まらない。

この感覚、痛いほどわかるんですよね。

でもね、安心してほしいんです。
「選ばなかった道がキラキラ見える現象」には、ちゃんと脳の仕組みとしての理由があるんです。

今日は、主人公カナのエピソードを通して、その正体といっしょに向き合ってみましょう。

【シーン1】キョウコがリーダーに。胸のあたりが、キュッて

シーン1

キッチンでお茶を入れながらスマホを見ていたカナ。
画面に流れてきた一行のメッセージ。

「…キョウコが新規プロジェクトのリーダーに?」

胸のあたりが、じわりと締まる感覚。
黒いモヤが広がるような、あの感じ。

廊下では、同僚たちがキョウコを囲んで笑っている。
「キョウコ昇格おめでとう〜!」「頑張るね!」

カナはその輪の外に立って、心の中でつぶやきます。
「キョウコは迷わなかったんだろう。私みたいに、立ち止まったりしないで…」

そして暗い部屋の中、パソコンの前で頭をよぎるのは、キラキラと輝く「もしも」の自分の姿。

「あの時、育休から早く復帰してたら…今頃あのポジションは…私が…」

この胸のキュッ。これがちいドロ(Feel)です。
小さいけれど、ちゃんと意味のある感情のしずくなんですよね。

【シーン2】深夜2時。「もしも」が止まらない夜

シーン2

深夜2時。子どもと夫が眠る布団の中で、カナの目は開いたまま。

「もし資格を取っていれば…もし転職していれば…もしも、もしも…」

翌朝、夫に「顔色悪いけど大丈夫?」と声をかけられても「大丈夫。ちょっと寝つきが悪かっただけ」と答えてしまう。
全然大丈夫じゃないのに。

このシーンを描いていて、私はすごく胸が苦しくなったんですよね。
「大丈夫」って言わなきゃいけない気がして、本当のことを言えない。
その孤独感、わかる気がして。

そしてカナの中でフラッシュバックのように蘇る、問いかけ。

「『あの時こうしていれば』と考える時、選ばなかった道に何を見ていますか?
その道は本当にキラキラしていましたか?それとも…」

漫画の中に、とても印象的な図が登場します。
左の道(選んだ道)は実際に歩いてきた現実の道。
右の道(選ばなかった道)は、虹がかかってキラキラ輝いている。

でもそのキラキラは、脳が勝手に美化した幻想なんです。
これが「後知恵バイアス」と呼ばれる、脳の罠なんですよね。

【シーン3】「あの時の私は、あの時の精一杯だった」

シーン3

ソファに座ったカナの横で、ハルトくんがブロックで遊んでいる。

カナはぽつりと気づきます。
「もし育休から早く復帰していたら…ハルトの最初の『ママ』を聞けなかったかもしれない」

そしてノートを開いて、こう書き始めます。

「資格を取る余裕?あの時はハルトの夜泣きで3時間しか寝てなかった。
あの時の私は、あの時の精一杯だった。」

これ、すごく大事な言葉だと思うんです。

夜泣きで毎日3時間しか眠れていなかった自分に「資格を取るべきだった」なんて、
後出しジャンケンもいいところですよね。

ノートに書いた瞬間、カナの胸のあたりに変化が生まれます。
「…あれ。さっきまでギュッてしてた胸のあたりが…少しだけ、ゆるんだ」

完全に消えたわけじゃない。でも、ほんの少し、ゆるんだ。
この「ゆるむ」感覚が、ちいすぐ(Act)の始まりなんですよね。

そしてそこへ、ハルトくんが駆けてきます。
「ママ!みてみて!ブロックでおうちつくったの!」
「…うん。見せて」

この「うん。見せて」という一言に、私はとても温かいものを感じました。

【シーン4】まだ途中。でも、悪くないかも

シーン4

夜、眠るハルトくんの寝顔を見ながら、カナはそっとつぶやきます。
「この寝顔があるのは、あの時の選択があったから。」

翌朝、職場の廊下でキョウコとすれ違う。
胸が「まだちょっとチクッとする。でも…」

カナは、一呼吸おいて言いました。
「キョウコ、リーダー就任おめでとう。応援してるよ。」

キョウコは笑顔で「え、カナ…ありがとう!一緒に頑張ろうね!」と答えます。

完全にスッキリしたわけじゃない。チクッとする気持ちは、まだある。
でもカナは、コーヒーカップを手に窓の外を見ながら思うんです。

「選ばなかった道は、もう歩けない。
でも、選んだ道は、まだ続いてる。
…まだ途中。でも、悪くないかも。」

この着地、すごく好きなんですよね。
「完璧に乗り越えた!」じゃなくて「まだ途中。でも悪くないかも」。
そのくらいで、十分なんだと思います。

まとめ

選ばなかった道がキラキラ見えるのは、意志が弱いからじゃない。
脳が勝手に美化しているだけ。
あの時の自分は、あの時の精一杯だった。
選んだ道は、まだ続いている。

「あの時、違う選択をしていれば」という思いは、
「もっと良く生きたい」というエネルギーが心の中にある証拠だと思うんです。

問題はそのエネルギーの向き先。
過去に向け続けると苦しくなるけれど、今とこれからに向ければ「次はこうしてみよう」という一歩になる。

後悔は、敵じゃない。
ちいドロ(Feel)→脳ダマ(Think)→ちいすぐ(Act)の順番で、少しずつ扱っていけるものなんですよね。

みなさんも、「あの時こうしていれば」と夜中に考えてしまったこと、ありますか?
よかったら、コメント欄で聞かせてくださいね。

【解説①】「脳ダマ」って何? ― 後知恵バイアスと反芻思考の仕組み

「ちいドロ感情日記」では、脳の自動反応パターンのことを「脳ダマ」と呼んでいます。
今回のエピソードには、二つの「脳ダマ」が登場しています。

脳ダマ①「後知恵バイアス」― 選ばなかった道を美化してしまう

選ばなかった選択肢を、脳が勝手にキラキラさせてしまう認知のクセです。

選んだ道のデメリットは鮮明に覚えているのに、選ばなかった道のリスクはきれいさっぱり忘れてしまう。
「あっちなら完璧だったはず」というストーリーを、脳が勝手に作り上げるんですよね。

カナが「早く復帰していたらリーダーになれたかも」と感じたのは、その典型です。
でも実際には、当時の体力・睡眠・状況すべてが「そうできなかった理由」だったはずで。

脳ダマ②「デフォルトモードネットワーク」― 夜中に「もしも」が止まらなくなる理由

ぼんやりしている時や夜中に活発になる脳の回路があります。
これが過去の出来事を何度もシミュレーションし直してしまうんです。

だから深夜2時に「もしも」が止まらなくなるのは、意志が弱いからじゃない。
脳の仕組みがそうさせているだけなんですよね。

「ちいドロ → 脳ダマ → ちいすぐ」の3ステップ

  1. ちいドロ(Feel)― 「胸のあたりがキュッとした」という小さな感情のしずくに気づく
  2. 脳ダマ(Think)― 「これは後知恵バイアス。脳が美化しているだけ」と理解する
  3. ちいすぐ(Act)― 「あの時の私は、あの時の精一杯だった」とノートに書いてみる

この順番が、とても大事なんです。
気づかずに行動を変えようとしても、夜中の「もしも」はなかなか止まってくれない。
まず感じて、仕組みを理解して、それから小さな一歩を踏み出す
この流れが、ちいドロの核心なんですよね。

【解説②】このエピソードに関わるEQのコンピテンシー

EQ(感情知能)には、シックスセカンズの考え方で8つのコンピテンシーがあります。
今回のカナのエピソードでは、特に2つが深く関わっています。

①楽観性の発揮(選ぶ)

可能性を信じて前に進む力。ただし、これは「根拠のない前向き思考」とは違います。

カナが「選ばなかった道は、もう歩けない。でも、選んだ道は、まだ続いてる」とつぶやいた瞬間、これがまさに楽観性の発揮なんです。

過去を書き換えることはできない。
でも、過去の「意味づけ」は今の自分が選び直せる。

「あの選択は失敗だった」ではなく「あの選択があったから、今ここにいる」。
心理学で「リフレーミング」と呼ばれるこの視点の転換は、EQでも大切にされている考え方なんですよね。

地味に見えるかもしれないけど、これって実はすごく大きな力を持っています。

②結果を見据えた思考(選ぶ)

行動の結果を想像する力。これは未来だけでなく、過去の選択を振り返る時にも使えます。

カナが「もし早く復帰していたら、ハルトの最初の『ママ』を聞けなかったかもしれない」と気づいた場面。
これは選ばなかった道にも、失われるものがあったという結果を、初めて想像できた瞬間です。

後知恵バイアスは「選ばなかった道のメリット」しか見せてくれない。
でも結果を見据えた思考を使うと、その道のリスクやコストにも目が向くようになるんです。

「あの時の精一杯だった」という言葉は、自己批判をやめるための言い訳じゃない。
当時の現実を正確に見ようとする、誠実な思考なんですよね。

後悔は「より良く生きたい」エネルギーのサイン

「あの時こうしていれば」と感じることは、決して悪いことじゃないと思うんです。

だってそれは、もっと良く生きたいというエネルギーが自分の中にある証拠だから。

そのエネルギーを過去に向け続けると苦しくなる。
でも今とこれからに向ければ、「まだ途中。でも悪くないかも」という一歩になる。

人間って面白いですよね。
後悔という感情の中に、前に進む種が隠れているんですから。

今日のちいすぐ

「あのとき」ではなく「今日できること」を1つだけ書き出してみる

🧠 ワビタンのEQ解説

過去の選択を何度も頭の中でやり直す。この「後悔のループ」は、脳が問題を解決しようとしている証拠でもあります。

EQの視点では、後悔は「過去への執着」である以上に「今の自分への不満や不安」のサインであることが多い。「あのときの自分」を責めることで、今向き合うべき感情を回避していることがあります。

過去は変えられませんが、今この瞬間の選択は変えられます。後悔のエネルギーを「今できること」に向け直すこと、それが感情ナビゲーションの力です。

他のエピソードを見る

ep22_1
22
false
苦手な人との対応の仕方に困ったら
モヤモヤ, イライラ, 緊張
感情と時間管理をテーマにした漫画の一コマ.
21
Conditional display
自分の予定していた通りにならなかった時のイラつき
イライラ,モヤモヤ,焦り
家族の会話と感情の変化を描いたイラスト.
20
false
人にレッテルを貼ってしまう正体
モヤモヤ,罪悪感,気づき
友達と会話しながら共感を示す女性のイラスト.
19
false
立場の強い人の意見に同調するわけ
同調圧力,自己抑制,モヤモヤ
ep18_1
18
false
あのとき、違う選択をしていれば…
嫉妬, 後悔, 自己否定
余計な一言を言ってしまうシーンのイラスト.
17
false
余計な一言を言ってしまう
後悔,不安,自己嫌悪

このエピソードの登場キャラクター

  1. カナと仲間たちの温かい交流を描いたイラスト。感情日記のテーマにぴったりの優しいキャラクターです。.
    ワビタン
    その他
    EQコーチ。感情ナビゲーションの専門家だが、自身も完璧ではない人間味のある存在
  2. 子供の笑顔と優しい表情のイラスト.
    ハルト
    カナの家族
    天真爛漫な幼児。カナとマサキの息子
  3. カナと仲間たちのキャラクターイラスト、感情日記に登場.
    マサキ
    カナの家族
    冷静で論理的なカナの夫。優しいが感情表現が苦手
  4. カナと仲間たちのイラスト、感情日記のキャラクターが笑顔で描かれています。.
    カナ
    カナの家族
    共感力が高く、自分を後回しにしがちなワーキングマザー